青木優介 STORYインタビュー
※2025年9月6日現在
ライフスタイルに合った自分らしい働き方を求める人が増える中、その実現には「雇用する経営者の仕事に対する考え方と職場環境」がカギを握る。行政書士 AOKI 事務所と株式会社PROTEAN代表の青木優介氏は、人事労務経験 20 年のキャリアを生かして、現在「企業が働きやすい職場環境を作ることで、社長も社員も幸せになれる土台作り」をサポートしている。
20年間のキャリア経験から導きだした「社長と社員のライフスタイルを守る働き方を実現するための人事労務の役割と安定した会社経営」を実現するために、どのようなサポートをしているのか青木氏に聞いた。
大学では法学部に入り法律を学びましたが、法律を使った仕事がしたいわけではありませんでした。
卒業式が終わってもやりたいことが見つからず、ちゃんとした就職活動をしていなかったため、入社できる会社がありませんでした。
そのため、1年間フリーターをしながら資格学校に通い、行政書士の合格を目指すことにしました。
周りには「行政書士になるため予備校に通っている」と言いましたが逃げていました。
本当は、自分に合った仕事を見つけて誰かの役に立ちたい想いはあるものの、そのために自分は何をすればいいのかわからなかったのです。
就活セミナーで「あなたのやりたいことはなんですか?やりたいことを仕事にしましょう」と言われますが、私はあの質問が今でも苦手です。
それがわからないから就職活動をするんじゃないの?と思っています。
テレビニュースで入社式の映像が流れているのを見て「もし、学生時代にちゃんと真剣に就職活動をしていたら、自分もこの入社式の中にいたんじゃないか」と思い、はじめて落ちこみました。
新社会人として前に進む同級生とフリーターの自分を比較してしまい、王道の路線から完全に外れ、同級生に置いていかれたような気持ちになりました。しかし、落ち込んでいても現実は変わらないので、行政書士の資格取得に向けてがんばろうと決めて勉強に集中しました。
2年後に合格することができましたが、行政書士としてすぐに独立・開業はしませんでした。
合格するまでフリーターしか経験してこなかったので、まずは正社員として社会人経験を積むことにしました。
学生時代は、法律を仕事にするつもりはありませんでしたが、行政書士に合格した後、法律を使った仕事がしたくなり弁護士事務所に入所しました。破産手続き、個人再生、債権債務の業務を担当しました。法学部時代に学んだことを活かすことができてそれなりに満足していましたが、せっかく行政書士に合格したのだから、やっぱり行政書士の資格を生かそうと考え、行政書士事務所へ転職(入所)しました。
行政書士で独立・開業する前に、行政書士がどのような仕事をしているのか仕事現場を見てみたいと思ったのです。
期待に胸を膨らませて入所しましたが、想像していたのと全く違う世界でした。毎日、事務所に借金とりが来るとんでもない環境でした。
まるでドラマや映画を見ているようでした。まもなく給与の遅延が発生、身の危険を感じるようになりました。
このままここにいても得られるものはないと考え退所しました。
前事務所での強烈な体験で、「行政書士だけで食べていくのは難しいのではないか」と不安になり、社会保険社労士の勉強を始めることにしました。社会保険労務士は、元々行政書士から派生してているため親和性があると聞いていましたし、ダブル資格取得の方が安心できると考えたのです。
4社目のベンチャー系人材派遣会社の時に、はじめて人事労務を担当しました。
人事労務は未経験でしたが、行政書士資格を持っているならぜひと言われ採用していただきました。
ベンチャー企業でしたので、忙しくなることは覚悟していましたが、私の想像を遥かに超える忙しさでした。
これまで経験した会社とは比べものにならないスピードの速さで仕事が進み、意思決定されていく。
新しいプロジェクトがどんどん立ち上がり、売上も社員数も短期間で増えていきました。
残業も多く、会社のスピードについていけないと考え、半年経ったら辞めるつもりでいましたが、その後、いろいろあり結果、約5年間働きました。
新入社員が、入社時に研修などで学ぶ「ビジネスマナーや社会人としての心構え」を知らないまま自己流で仕事をしてきたため、上司に「仕事のやり方や振る舞い」について注意されることが何度もありました。
過酷な職場環境でしたが、自分では気づかない欠点に気づかせてくれる、間違っていることを違うぞと指摘して改善を促し、育ててくれる会社環境が初めてだったので、とても有難いと思いました。
上司から注意を受けると、自分なりに新たな目標を設定し、PDCAを習慣にして、少しずつ改善していくように努力しました。
そのようなことを繰り返しているうちに、気がついたら5年の月日が経っていたのです。
令和時代なら、間違いなくブラック企業に認定される残業が多い会社でしたが、私にとっては毎日が新鮮で、学ぶことも多く、とても刺激的でした。自分の役割と居場所があり、必要とされている安心感もあり夢中になって働きました。
帰宅するのは「寝る時と洋服に着替えるだけ」でしたが、必死に働いたおかげで、知識も経験も身につき、自分自身大きく成長することができました。大変でしたが充実していました。4社目で自分に自信を持つことができるようになりました。
数年後、この会社は経営者の不正が発覚、会社は倒産してしまいましたが、切磋琢磨した上司・同僚をはじめとした仲間とは今でも交流しています。マネジメントや社内の人間関係においてうまく振舞うことができず、元部下や元同僚に迷惑をかけ、悩んだこともありました。
それでも、努力する姿を見た元上司が、私の人事労務経験を高く評価してくださり、スカウトを受け転職することができました。
この頃から「人事労務の仕事はきっと自分に合っている、他者からも評価していただけている、人事労務は私の強みであり天職かもしれない」と思えるようになりました。
お恥ずかしながら、私の人事労務時代の失敗をいくつか紹介します。当時、私には2人部下がおりましたが、それぞれ 3 か月で退職してしまいました。私は「仕事が合わなくて退職したもの」と思っていましたが、上司から「相手のことを見てマネジメントしなさい」と注意を受け、私のマネジメントに原因があったことを知りハッとしました。当時の私は、「私が出来る業務は、みんなも出来るに決まっている」と思い込んでおり、部下にマニュアルだけ渡して、具体的な指示はしていませんでした。わからないことがあれば部下から質問してくるだろうと思い込んでいたのです。
部下から質問や相談がなければ基本的には放置、そんなひどい上司でした。
自分の業務が忙しく、部下のことまで考える余裕がなかったこともありますが言い訳ですよね。
マネジメントをしているとは言えない雑な対応をしていたことを深く反省しています。
社会保険を担当していた時、会社に調査が入ることになり、全体会議で各部署に協力を依頼しました。
私としては、担当者として当然の依頼をしたつもりでいましたが、私のこの行動が社内で反発を生み、複数の部署を怒らせてしまいました。
ある日、他部署の部長から呼び出され「青木、お前が言っていることが正論なのはわかる。しかし、会社は人事だけで回っているわけじゃない。人事の立場だけで正論を主張するな。もっと周りのことを考えなさい」と指摘されました。
売上目標を達成するために必死の営業部は、調査に協力することで、人と時間が割かれその分売上が下がってしまうことを懸念し、明らかに協力したくない表情でした。それぞれの部署には明確な目標があり、その目標に向かって具体的な計画を立てて仕事をしています。
そのことを考えず、一方的に自分の主張をしていたことを反省、謝罪に回りました。
私は、「社内の誰よりも一番に法律を理解し、会社を守るために社内に代弁することが自分の役割だ」と信じていたのですが、進め方が悪かったのです。この出来事があって以降、他部署のキーマンたちと日頃からコミュニケーションをとるようにしました。
お願いごとがあるときだけ主張するのではなく、日頃からコミュニケーションを行い信頼関係を構築するようにしました。
組織で何か新しいやり方を取り入れたり、変更するためには他部署との連携・協力が必須です。
さらに、たとえ会社のためであったとしても、反発が予想される提案をする際には、会議の前に根回しを徹底するなど、相手の立場を考えた細かな配慮と説明、理解・協力してもらう努力を心がけるようにしました。
少しずつ人事として私の顔や人間性が社内で認知されるようになり、物事がスムーズに進むようになっていきました。
それまでの私は、1人で考え、1人で悩み、1人で思い込み、1人で解決しようと頑張っていました。
他者と協力し合うように仕事のやり方を変えてから、「その件は〇〇部の〇〇さんに相談したらうまくいきますよ」「〇〇部の〇〇さんに話す前に、△△部長に相談した方がいいよ」といった、私が知らなかった適格なアドバイスをいただけるようになり、物事がさらにスムーズにスピーディーに進むようになりました。同時に、自分1人ではできないチームで仕事をする面白さ・楽しさを実感し、組織で働くことのやりがいを感じるようになりました。会社を守るためにも、社員がやりがいを感じ働きやすい環境にするためにも、他部署との連携・協力は必要不可欠です。
人事労務の仕事で自分に自信がついてきた私でしたが、その後会社が倒産したため仕方なく転職した 5社目の IT 企業にて、新たな仕事の悩みを抱えるようになりました。それまで5年間評価されてきた前職での仕事の進め方が全く評価されず、叱責される日々が続いたのです。
前職では、常に最新情報を社内で共有することが正しいとされ、途中経過であってもその都度報告することがルール化されていました。
私自身も習慣になっていました。しかし、この会社では経営者に「お前のメールはいちいちうざいんだよ」と注意を受けてしまい、ルール・価値観・常識が全く違っていたのです。自分のどの部分を、どのように改善したらいいのか全くわからず理解に苦しみました。
もうこれ以上は無理だから退職しようと思った矢先、会社側から終了を告げられました。転職して3か月でした。
ある会社では高評価でも、別の会社では真逆の悪評価を受けてしまう現実を身をもって体験しました。
現在、弊社では、求職者と採用企業の紹介マッチングサービスを行っていますが、私自身の苦い経験から、求職者が求める企業と採用企業が求める人材について、細かいところまでヒアリングするようにしています。
これまで、会社で嫌な経験をされた方も、会社が変われば環境が好転するかもしれません。
諦めないで自分に合う会社を探してほしいと心から思います。
6社目の大手金融系グループ会社で人事をしていた時、会社が契約した社会保険労務士法人のコンサルタントが月 1 回定期訪問してくれました。
私が作成した評価制度が法的に問題ないかのチェックや、改正されたばかりの法律について会社として違法性がないか労務チェックしていただきました。その他、助成金申請の進め方、トラブル社員に関する具体的な対処方法、新しい制度改正の情報提供と解説など、日頃の業務での疑問点や不安に思うことをすべて相談させていただき適格なアドバイスをいただきました。
私にとって、このコンサルタントの存在はとても大きく、知りたい時・困った時にすぐに確認ができるのでとても安心感がありました。
新しい法律の解釈も、専門家のアドバイスがあるおかげで、社内で自信を持ってわかりやすく説明することができました。
さらに制度改正など、人事の仕事を着実に前に進めることができたのもこのコンサルタントのおかげです。
「社外に頼れる専門家コンサルタントがいる」この出会いと安心感が私自身の進むべき道を照らしてくれました。
現在、私が人事労務コンサルタントをしているのは、この時の経験が大きく影響しています。
これまで 5 社で人事労務を経験しました。大手企業の人事労務、中小企業の人事労務、両方を経験しました。
それぞれ、業界も会社の規模も全く異なりますが、人事労務としての基本姿勢や基本姿勢はほとんど同じでした。
5 社の経験を通じて「業界や会社規模が変わっても、前職までの経験が無駄にならず、仕事の再現性があり、経験が活かせること」がわかりました。そして、自身の経験を生かして、今後は、人事労務業務について悩んでいる担当者や、人事労務の仕事でスキルアップしたい方、人事労務を自分の強みにしたい方の力になりたいと思うようになりました。
また、これまで、人事労務の業務がうまくまわっていない企業をたくさん見てきました。
私どもがお手伝いすることでスムーズに回るようになった企業もあることから、人事労務で手助けしてほしい企業のコンサルティングも行っています。
弊社が掲げる「誰 1 人取り残さない社会をつくる」というのは、これまで私自身がもがき苦しんだ経験から、想いを言葉にしたものです。
これまで理不尽で想定外の出来事に遭遇した方にも、自分らしく仕事をしてほしいと思っています。
私が 5 年間夢中になって昼夜関係なく働いた企業は、売上はよかったですがブラック企業と呼ばれる環境でした。
そして数年後に倒産しました。令和時代、売上がよくても、コンプライアンスや法律違反が見つかれば信用を失い、会社として経営し続けることが難しくなる時代です。今後、人事労務の存在は、会社にとっても社会にとっても重要な役割を持つと考えています。
管理部は、経営に直結した部署であり、法律やコンプライアンスから会社を守る要塞のような役割もあります。
経営に直結する管理部のみなさんには、人事労務の業務だけではなく、管理部門だけでなく、他部署も含めて会社全体を見てくださいとアドバイスしています。第一線で動いている営業や工場の人たちは、今何をしていて、何に困っているのか?
現場の人たちの話をリアルに聞かないと真実はわからないのです。同時に現場で起きていることを社長に説明して、社内を説得できる戦略的な行動力も必要です。このように、これからの人事労務は、言われたことを言われた通りにやっているだけではダメです。
法律改正など外部の最新情報と、社内の最新情報両方を知り、先回りして対策を考えることが必要です。
私自身が過去に失敗したように、社内にマニュアルがあっても、マニュアルだけでは回らないことがあります。
マニュアルだけでは出来ない仕事、動かない部署、動けない人たち、解決しない課題というのが必ず存在します。
当然、お互い人間ですから、人の好き嫌い、合う合わないはそれぞれあります。相性が合わない苦手な社員もいるでしょう。
私にも苦手な人はいます。しかし、どんな人ともコミュニケーションができないと、仕事における信頼関係の構築がその分難しくなります。
コミュニケーションを避けてしまうことで、お互いの本音がわからず誤解を生んでいる可能性もあります。
人事労務の役割を再度意識していただき、積極的に会社経営に関わり会社と社員を守る「戦略的人事労務人材の育成」に携わっていきたいと考えています。
①人事労務担当者の「視野」の問題 点しか見ていないため会社全体の動きを理解せず合っていない
②人事労務担当者の「役割」の問題 自分は管理部門だから…と他部署と一線を引いてしまっているため他部署との社内コミュニケーションを軽視しがち
③人事労務担当者の「知識スキル」の問題
知識スキルが低く段取りする力が弱い
法律改正があっても文言以上のことが理解できないため法律改正の中身をそのまま伝えるだけにとどまっている
④人事労務担当者の「リーダーシップコミュニケーション」の問題
自社で具体的に何をするのか具体的なリーダーシップがとれない
社内で協力してもらうための伝え方が適切でない
⑤人事労務担当者の「トラブルや有事が起きた際の対処方法」の問題 自社でのトラブル、例えばハラスメントや従業員による事件や事故が起きた際の初動や対応力が乏しく(知らない・やったことがない・できない)動かなければいけない時に動けない
⑥人事労務担当者の「業務と利益の紐づけができてない」問題
会社の経営数字(損益計算書など)を目にはしていても、「それは経理や経営陣の仕事」と捉え、自分自身の業務とは直接関係ないと考えてしまう
利益が出ることで、費用に周ることをちゃんとわかっていない
⑦人事労務担当者の「業務改善の意識が乏しい」問題
現在の業務の進め方について、改善できる点もあるが、やり方を変えることで、予期せぬ工数や手間があるのではという不安から現状を変えない
結果として、業務改善や生産性向上に至らない
⑧「人事労務こそ他部署に興味関心を持ち、協力体制をつくる意識」を持つ
管理部門と管理部門以外の部署では、仕事内容・仕事相手・スピード感など様々な違いがあり、他部署のことを 100%把握することはできません。
どの部署であっても会社のルールに則って動くことが基本ですが、それでも取引先都合など様々な要因により、調整が必要になる場合があります。
そこで、人事労務は日頃から他部署に興味関心を持ち協力体制をつくることが重要であると考えます。
具体的には、営業部のミーティングに人事労務も参加し、実際の数字など現在の状況や課題を知ることです。
人事労務は、他部署が抱える人事労務以外の課題を解決することは難しいですが、社員にとって給与に直結する人事評価は気になるものです。
また、人事労務の対応が悪ければ優秀な社員が離職、他社に転職されてしまうリスクもあります。
人事労務が他部署を理解して、協力することで会社全体の状況がわかり、役割分担がさらに明確化します。
人事労務がそれぞれの部署の価値を最大化する意識を持ち、仕事しやすい環境づくりに協力することが、結果、安定経営につながると私たちは考えます。
「社長にとっても、管理部門にとっても、社員にとっても三方よしの会社を日本に増やしたい」そんな想いを胸に 2015 年行政書士として独立しました。企業へ人事労務コンサルティングを行いながら、就業規則を見直し、人事労務が全くわからない社長と社員へ人事・労務を教えています。
2018 年頃から、ネパールとミャンマーをはじめとした東南アジアから働きに来られている外国人労働者の在留資格手続きを行っています。
少子高齢化の日本では、外国人労働者を採用しなければ労働力不足になります。
この頃から、外国人雇用支援や就業ルールの整備など、制度の面から企業の「土台づくり」にも力を注ぐようになりました。
しかし、制度を作っても、制度通りに動いてくれない、部門間で連携がとれない、次世代のリーダーが育たない、社員の主体性が育たないといった新たな課題が見えてくるようになりました。
2019 年に人事労務コンサルティング会社として株式会社 PROTEAN を設立。
2025 年現在、行政書士 AOKI 事務所と株式会社 PROTEAN 両方で、会社と働く人の支援を行っています。
会社名の「PROTEAN」には、「変幻自在」「多様な姿に変わる」という意味があります。
変化が激しい時代において、会社が最適な形になるためのサポートをしています。
外国人採用未経験の会社や、外国人労働者の教育なども行っていますので、まずはお気軽にお問合せください。
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